ざっくり言うと
- 起源は19世紀のアメリカ。1866年の牛追いの炊事車「チャックワゴン」と、1872年に新聞社の前で夜食を売った「ランチワゴン」です。
- 日本は江戸の屋台、戦後のバラック屋台、昭和のロバのパン屋、平成の弁当販売と続き、2000年代にオフィス街のランチ営業へ広がりました。
- 2021年6月の食品衛生法改正で許可業種が34から32に再編。喫茶店営業が飲食店営業に統合され、車での営業も同じ区分になりました。
アメリカの始まり
車で料理を運び、その場で食べさせる商売の元祖として、アメリカの公的機関や歴史サイトが挙げるのが2つあります。ひとつは西部のチャックワゴン、もうひとつは東海岸のランチワゴンです。
チャックワゴンは1866年、テキサスの牧場主チャールズ・グッドナイトが、軍の払い下げ荷馬車を移動式の台所に改造したものです。鍋やダッチオーブン、豆・米・干し肉・小麦粉を積み、3〜6か月続く牛追いの間、カウボーイの一行に食事を出しました(米国国立公園局)。
ランチワゴンは1872年、ロードアイランド州プロビデンスで、ウォルター・スコットが始めました。幌馬車の側面に窓を切り、新聞社の前でサンドイッチ・ゆで卵・パイ・コーヒーを夜勤の労働者に売った。夜は食堂が閉まっていて、腹を空かせた人に売る場所が無かったのが理由です。1877年には真似する業者が現れ、この馬車が後のダイナーの原型になりました。
20世紀に入ると車になります。HISTORY の記事によれば、1950年代にアイスクリームトラックが今とほぼ同じ姿で街に出て、1960年代にはタコスやハンバーガーを売る大型のトラックが登場。2000年代初めには「汚い」というかつてのイメージが消えていました。
日本の屋台から
日本の流れは、日本ケータリングカー協会がまとめた年表がわかりやすい。屋台と車の話がつながっています。
| 時代 | 何があったか |
| 江戸 | 夜鳴きそば、握り寿司の屋台 |
| 大正〜戦前 | リヤカーが発明され、ラーメン・たこ焼きの原型 |
| 戦後 | 配給では足りず、バラック建ての移動屋台が急増 |
| 昭和30年代 | ロバのパン屋。東京オリンピック後に自動車へ |
| 昭和40年代 | 軽トラックの移動販売、地方の移動スーパー |
| 昭和後期〜平成初期 | クレープ。オフィス街で弁当の移動販売 |
| 平成不況期 | イベント会場のケータリングカーが一般化 |
| 2001年〜 | オフィス街のランチ営業、移動コンビニ |
戦後の移動屋台は、戦災で店を失った人が生活のために始めたものでした。昭和後期にオフィス街の弁当販売が出てきた背景として、同協会は女性の社会進出を挙げています。
今のキッチンカーに直接つながるのは、平成不況期のイベント出店と、2001年以降のオフィス街ランチ。イベントで一般化した車が、平日の昼の空き地に入っていきました。
オフィス街ランチへ
2000年代以降、オフィス街の遊休地に日替わりで車を入れるランチ営業が広がります。ビルの管理側が場所を出し、運営会社が店を集めて枠を割り当てる形です。しくみの詳細はオフィス街ランチのしくみに。
当サイト掲載データ(2026年9月集計、831店・476か所)でも、定期の出店枠は月〜金が468〜510件ずつ、土曜5件、日曜3件。100年以上前のランチワゴンが夜勤の労働者に売ったように、今のキッチンカーは平日の昼の会社員に売っています。
2021年の法改正
キッチンカーの許可のしくみが今の形になったのは、2021年6月1日です。この日、2018年に公布された改正食品衛生法にもとづく新しい営業許可制度と営業届出制度が始まりました。
厚生労働省の資料によれば、それまでの許可業種は「昭和47年以降、見直しがなされておらず、実態に合っていない」状態でした。改正で34業種が32業種に再編され、旧「喫茶店営業」は飲食店営業の一形態として統合。飲食店営業のうち、唐揚げやフライドポテトのような簡易な調理には施設基準の一部緩和が設けられました。
車で調理する営業も、この飲食店営業の枠に入ります。新しい申請書には「自動車において調理をする営業の場合」に自動車登録番号を書く欄があり、都道府県をまたいで営業する運用も示されました。東京都の案内では「飲食店営業(自動車)」と表記されます。開業の手順はキッチンカーの始め方で。
コロナ禍の動き
2020年、キッチンカーは出る場所を変えました。日本経済新聞は2020年10月28日の記事で、在宅勤務の増加を受け、オフィス街やイベント頼みだったキッチンカーが住宅街やマンション前に現れていると報じています。東京都は業態転換を支援する助成を出しました。
外食大手も入ってきます。日経ビジネスによれば、モスバーガーは2022年1月29日に大田区でキッチンカー業態「MOS50」の1号店を開き、住宅街の持ち帰り需要を狙いました。同じ記事は、競合のいきなり!ステーキやデニーズがオフィス街やショッピングセンター中心に展開していたことも伝えています。
それでも当サイト掲載データ(2026年9月集計)では、会場名に「ビル」を含む会場が135か所、「公園」は19か所。平日昼の中心は、今もオフィス街です。曜日ごとに顔ぶれが変わるので、探すときはエリア一覧から会社の近くを見るのが早い。